(前略)
ここまでのお話を受けて、スピーカーは東洋大学総長の福川伸次先生にバトンタッチします。
福川伸次先生は、大平正芳総理秘書官、通商産業省事務次官、神戸製鋼所副会長、電通総研社長、東洋大学理事長などを歴任され、戦後日本の経済、教育、文化を常にトップランナーとして牽引して来られた、今の日本には数少ない真の“重鎮”です。
今回、日本再生の命運を賭けたJVFのリスタートにあたり、なんとしても直接お話を伺いたいと思い登壇をお願いしました。
福川先生は、世界という横軸と歴史という縦軸の中で、日本がこれまでどのような道をたどり、今どのような位置に立っているのか、以下の11のデータを示しながら俯瞰的に解説されました。
・世界のGDPシェアの変遷(1820-2021)
・主要国の国際競争力とデジタル競争力の順位
・国連負担金比率の推移
・研究開発に関する主要な指標
(研究開発費、研究開発費の政府負担割合、研究者数、博士号取得者、特許出願数、論文数シェア)
・業種別R&D投資日米構成比較
・技術別特許取得順位
・日米独の労働生産性比較
・時価総額ランキングの推移
・温室効果ガス削減率と経済成長の比較
・日本における留学生の派遣と受け入れの推移
・米国における海外からの留学生受け入れ数
福川先生は極力主観を交えず淡々と各データを解説されて行くのですが、伺っているうちに、かつては数多くの分野で世界の頂点をきわめた日本が、やがて斜陽化し、いつしか凋落と言わざるを得ないところまで転落してしまった様が、まざまざと浮き彫りにされて行きました。
10分程度に凝縮された福川先生のプレゼンが終わると、自然と会場から感動の拍手が湧き起こりました。
私も熱いものが胸に込み上げていたのですがナビゲーターとして、「先ほど山口先生が中央研究所廃止のくだりで、『無駄を切るつもりが頭を切ってしまった』と語られましたが…」と水を向けると、福川先生は間髪入れず次のように語り出しました。
「『魚は頭から腐る』とはロシアの諺ですが、はたして本当にそうなのか確かめたいと思い、ある日漁港に行って漁師に尋ねました。
すると漁師はこう答えました。
『魚というのは、頭もエラも腹わたも一斉に腐る』と。
つまり、政治も企業も官僚も、慢心した途端に一斉に腐り出したということです。」
91歳の今に至るまで、世界という舞台の第一線で勝負し活躍され続けて来た知の巨人の、まさしく寸鉄人を刺す一言に、胸が打ち震えた瞬間でした。
(後略)
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