畑恵のブログです
それでは、『京の十二月』を一月から順に見て参りましょう。
一月の銘は「御所」。
京都御所の紫宸殿前に植えられている"右近の桜"、"左近の橘"を象った和三盆の干菓子が、端正に並んでいます。
さすが、長きに亘り帝(みかど)に御菓子を献上し続けきた御用達の菓子司という、凛とした矜恃が伝わってきます。
二月の銘は「稲荷」。
四角の種合わせ(薄い煎餅種に餡をはさんだもの)に施された、赤い鳥居が続く刷り込みから、稲荷とは伏見稲荷大社であることが伺えます。
二体の紙垂(しで)の下には、愛らしい土鈴と飴細工の榊の葉がぎっしりと詰められ、ちなみに土鈴は振るとカラカラと音までする念の入れよう。
眺めているだけで、まるで伏見のお稲荷さんへ初詣したかの如く、清々しい気持ちにさせていただける御菓子です。
三月は「圓山」。
八坂神社や知恩院に隣接する円山公園と言えば、やはり"枝垂れ桜"。
ということで、祇園の舞妓はんを飾る簪(かんざし)のように、はんなりとして繊細な桜の小枝が詰められています。
もう一方は、「祇園豆腐」という田楽豆腐を模した干菓子。
祇園豆腐は八坂神社の参道に今も残る老舗料亭「中村楼」の名物料理です。
創業は今を遡ること450年という中村楼、格式高い高級料亭として威容を誇りますが、昔の茶屋の雰囲気を味わえる店構えも残しています。
実にリアルなこの御菓子を見て、以前、初夏の縁台で風に吹かれながら味わった祇園豆腐が懐かしく蘇ってきました。
四月は「都をどり」。
都をどりは、京都祇園の芸妓衆によって、甲部歌舞練場で4月1日から30日まで行われる催しで、春の季語ともなっています。
祇園のシンボルである"つなぎ団子"が焼印されたぼんぼりを模した種合わせの下には、舞妓はんのダラリの帯を再現した飴細工が詰められ、舞い散る桜の花びらが添えられています。
まさしく京の春爛漫という御菓子です。
〔後編〕につづく・・・
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