(前略)
そしてパラリンピックには、車いすテニスでグランドスラムを制した大谷桃子選手と、車イスバスケの高柗(たかまつ)義伸選手の2名が出場する。
(画像:パラスポーツマガジン)
大谷選手は作新高校在学中は健常者のテニス選手としてインターハイにも出場しており、その後に病を得ることとなり車椅子生活となった。
高柗選手は高校入学当時は杖を使用して歩いていたが、在学途中から車イスを使うこととなった。
完全にバリアフリーにはなっていない校内を、何人ものクラスメートが車イスごと彼を抱え階段を上り下りして、どこにでも連れて行った。
良きクラスメートに恵まれたのだろうが、高柗選手には周囲の者たちをそうさせずにはおかない魅力と人徳があった。
卒業式の日、会場である総合体育館の階段から、弾けんばかりの笑顔を湛えた級友たちが担ぐ車イスで一段一段降りてくる高柗選手の、鳳輦の玉座にあるプリンスかと見まごう神々しい笑顔と、その周りで我が事以上に彼の卒業を喜びはしゃぎまくるクラスメートたちの輝きに満ちた瞬間を、私は一生忘れない。
いまや不条理の真骨頂となってしまった東京五輪。
しかし出場を決めた選手たち一人ひとりに、私たちの想像を絶するような壮絶で輝かしいドラマが、きっとあるに違いない。
そう、一流のアスリートは、人知れず乗り越えた「レジリエンス」のオーラを誰しも纏(まと)っている。