(前略)
山中:ええ。実は父親が亡くなってしまい、病気だった父に結局何もしてあげられなかったことで、医師としての道をどうドライビングしたらいいかわからなくなってしまって。そういうことがきっかけで始めたのが、研究なんですね。研究というのは時間がかかるけれど、今は治らない、治せない患者さんを将来治す可能性がある。学生時代に考えていた自分の将来とは、全然違うことを今やってるんですね。
畑:実は、先生が研究者という新たな道を選ばれた同じ年に、私もNHKを退局しフリーランスのキャスターとなりました。その3年後には文化政策や文化行政を学びに、パリへ留学。帰国後、文化予算の増額を国会議員に陳情したところ、「そんな金にも票にもならないこと、(国会に来て)自分でやったら」と言われまして。結局、国会議員になりました。
山中:国会では、研究成果が海外に流出してしまわないよう、基礎研究から実用化まで一貫した日本の科学技術体制を整備することに取り組まれていましたよね。
畑:山中先生からもご指導をいただいて、議員立法を目指したのですが。そういう自分が、今は教育に携わっているのも不思議な話だと思います。
山中:割と日本の文化、社会というのは、直線型と言いますか。あまり変えない、この道一筋何十年という人が尊敬される。それは非常に良いことだとも思うんですが、アメリカには直線型の人と同じくらい、クルクルやることを変える人も多い。僕は、「回旋型」って呼んでるんですけど。
畑:先生も螺旋階段を上るよう華麗な転身をされ、ノーベル賞という頂点をきわめられました。
山中:いえいえ。僕も同じことをずっとやっていると飽きちゃうというか。ただ、それは日本の文化とは相いれなくて、すごく引け目があったんです。でもアメリカに行くと、面白い人がいっぱいいた。例えば、iPS細胞のような新しい技術に、直線型がほとんどの日本人は飛びつかないんですね。アメリカは両方のタイプがおられるんで、回旋型の研究者はパッと今までの研究が残っていても飛びつく。だから、その研究がどっちに転んでも、アメリカはうまくいく。アメリカの多様性ですね、多様な人を認める強さというか。
畑:アカデミア・ラボという建物も、直線を極力使わないでほぼ曲線でできてるんです。階段も螺旋階段ですし。均一で直線的な方が、教育現場も効率的ではあります。でも作新には、幼稚園から大学・大学院まで幅広い年齢層の子どもたちがいて、東大・京大に入学し医師や官僚になる子もいれば、オリンピック選手になる子もいる。商業や工業系で学んで、地域を支える礎(いしずえ)になる子も大勢います。
山中:今、学校に必要なのは、直線型と回旋型、両方いて良いんだというふうに育てることですよね。絶対、両方の生徒さんを育ててほしいです。
畑:日本の学校教育全体で、取り組むべきことですね。自分も回旋型で職業は色々変わりましたが、振り返ると“思い”は常に一つだった気がします。ほんの少しでもいいから世の中を良い方向に変えたい。そこは死ぬまで変わらないと思います。
山中:終身雇用や社会保障といったシステムが変わっていく中で、直線型が一番安全という構造では、もはや日本社会はなくなっています。イノベーションが次々起こり、10年、20年後がどうなっているか本当に予測できない世の中ですから、直線型だけでなく回旋型の人材を日本はもっと輩出していかないと。そういう意味で、アカデミア・ラボでの教育は、非常にそういうことにつながると期待しています。
基礎研究とは、「0(ゼロ)から1」
を生み出す仕事。
その1を100、1000と発展させ実用化
するには 多様な才能や人材、つまり
「チーム」の力が不可欠。
―山中伸弥氏
(後略)
全部はこちらをご覧ください。
https://ameblo.jp/japanvisionforum/entry-12324917618.html
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